《コラム》24 「暖冬」
雪が降らない。「足元に雪がなくて有難いですなー」この時期出会う人から定番のようにでる言葉である。確かに朝早くから除雪をしなくても良いし、車の上の雪もはねなくていいので日々の暮らしはとても楽である。しかし本当に喜んでばかりで良いのだろうか?
私の地区には食料品の卸問屋に勤める若者がいる。彼はスキー場にも食品を納めていて、シーズン前には雪が降る時期を見越して山小屋へ食材を納品している。冷凍食品なので小屋の冷蔵庫に入れてシーズン到来の準備をしているのだ。先だってスキー場がオープンしてから彼のスキー場への食材納品の話を聞いていると、これが大変な苦労なのだそうだ。
ゲレンデの麓にある小屋へは車が横付けになって問題はないのだが、なんと山頂にある小屋までへも配達するとのこと。当然、車がそこまで行くはずはない。人が乗るリフトを利用して荷揚げをするという。しかも直行リフトばかりではなく、乗継をしなければならないところもあるという。品物の積み下ろしから小屋までの運搬も大変な重労働らしい。もしオープン出来ても、売り上げが少ない場合は品物を引き取らなければならないという。苦労して運んだ荷物を下ろすとなるとどんなに気持ちが落ち込んでしまうだろう。
雪が降らずに暖かい冬となると他にも困ることがある。家電品や衣料品、冬用食品などの季節商品が売れないのだ。そして雪不足になると山の保水量が減って、夏の水不足も心配される。また農家を悩ます猪の獣害も関係する。なぜなら雪が深いと猪は雪に足を取られて動きにくくなり、餌が獲れず餓死してしまうことがあるという。自然淘汰されて人間との共生のバランスがとれるのかもしれない。雪不足はそのバランスさえも壊してしまう。
何れにしても冬は寒く、夏は暑く例年通り季節が巡ることが経済的にも日常の暮らしにおいてもバランスがとれる。
ここにきてようやくいつもの冬がやってきた。この若者もほっとしているに違いない。