《コラム》03 「割り箸と花粉症」
以前、環境問題をテーマにしたテレビの番組で「マイ箸」を持ってレストランに行く人を捉えて、自慢そうにしているカップルを映し出している映像を見たことがある。このカップルはきっと木材を使わない事で環境に貢献している自分たちに優越感を抱いているのであろう。また、その映像を見ている視聴者も感心してみている人がほとんどではないでしょうか。しかし「マイ箸」を持って外食をすることが環境保護に貢献しているとは決して言えないのです。
日本の国土の森林率は68%で、フィンランドに次ぐ世界第2位の森林王国です。その内、約半分は杉や桧の人工林です。戦後政府の指導による拡大造林政策で、自然林が伐採されて大量の植林がなされました。植林をした後は間伐をする必要があります。間伐をした材料を山から出して、森を健康な状態にしておく事が大切です。しかし「マイ箸」運動のような誤った知識を与えることで木材の需要が減っていき植林した森が荒れてきています。また、割り箸の需要が激減したために日本の割り箸生産業者の経営が成り立たなくなっています。ちなみに現在の多くの割り箸は中国から輸入されています。中国の森林率は21%です。中国は少ない木材を伐採して木材余りの日本へ輸出をしているのです。
木材は葉からの光合成によって成長しています。光合成とは二酸化炭素を吸って水と太陽の光を得て酸素をはき出す作用です。つまり、森がなければ人間は地球上で生きて行くことができません。しかし、50年から60年も経った木は光合成をしなくなります。そして子孫を残す為に大量の花粉を飛ばします。成長した木を切り出して、あらたに植林をすることが二酸化炭素を吸収し、木材の自給率を高め、花粉の量を減らす事になるのです。
日本の食料の自給率は約40%ですが、木材の自給率はさらに格段に低く、24%しかありません。世界第二位の森林王国が76%の木材を世界各国から輸入しているのです。森林率より自給率の方が低い国は日本以外にありません。オーストリアという国は林業が最先端の国になろうとしています。そして完成したばかりの原子力発電所を一度も稼働させないことを国民投票で決めました。間違った森林保護運動が日本の森林を悲惨な状態に落とし入れ、花粉予報というものが天気予報と同じようにテレビで報道されるというばかばかしい国になってしまいました。文明の進歩という名のもと、経済優先論がこのような状態にさせてしまったのかしれません。
写真:木が曲がり荒れ果てた来日山