《コラム》09 「祭り」
トントン、トントン、太鼓の音を聞くとなぜかうきうきとしてくるのは子供も大人も同じである。どの地区にも幟が立てられ、祭りの気分が高揚してくる。
一年の収穫を神様に報告し感謝する。農耕民族である日本人の大切な行事である。地区ごとに神社があり、収穫した米やもちをお供えし、村人が参拝する。神様に詣るのであるが、宗教的な要素というよりも一つの行事として捉えたほうが良いと感じる。
神社もそれぞれ相当古く歴史を刻んでいる。賽銭箱や、棟札には西暦ではなく元号で書いてあるので簡単には築年数が判らない。調べてみると百年単位で表現してもよいくらいの歴史である。その昔は今よりももっと、農作物の収穫に大きな感謝の気持ちを捧げたのであろう。米の収穫が一年で最も大きな仕事であり、それを無事に終えた事が大きな喜びであったに違いない。その度合いが少しずつ変化してきたとはいえ、この祭りは一度も休む事なく行われてきたのであろう。何時の時代に始まったのか知れないが、慣習から伝統となり日本の文化となっている。
そして、祭りにはなによりだんじりがなくてはならない。神社の広場にだんじりが引き出され、だれかれとなく太鼓をたたいて気分を高めていく。子供も大人も法被を着て、祭と書かれた手ぬぐいを頭にまけば、否応なく気分は最高潮である。いよいよ村の全ての家を廻る引きまわしが始まる。宮総代を筆頭に廻る順番も決まっている。各家々もだんじりがやってくるのを待ちかまえていて、振る舞い酒とつまみ、子供にはおやつ、そして祝儀を渡す家もある。自宅の庭に太鼓の音と共に揃いの法被を着た若集や子供たちが賑やかに来てくれてとても楽しい気持ちになる。引き手もはじめの頃は元気であるが、廻るごとに酒が入り、終わりに近づくにつれて酔いがまわり、足元がふらつき出す。それでも最後まで村中を廻って祭りが終わり、再び神社の扉は閉じられ、静寂が戻ってくる。
間もなく二十四節気の立冬を迎える。秋の紅葉の美しさも色あせて冬の足音が近づいてくる。木枯らしが吹く時期であり、稲刈りを終えた田んぼの藁を燃やす煙が日本の農村の原風景を現している。
毎年、里やま工房モデルハウスの前にもだんじりが廻って来る。祭りの掛け声は迫力がある。