《コラム》21 「稲刈り」

投稿日:2015.11.03

「米のなる木で作りし草鞋 踏めば小判の跡がつく 俺が在所に来てみやしゃんせ 米のなる木がお辞儀する」
 山形県の民謡、花笠音頭の一節である。

 今年も、一面が黄金色に染まり豊かな実りの季節を迎えた。農耕民族である日本人の、一年で一番大きな行事が稲の刈り取りであるかもしれない。減少した農業従事者をカバーし、ここで威力を発揮する機械力がコンバインである。最近のコンバインは更に進化している。かつては、籾袋を軽トラックに積み込み、作業場に運び乾燥機に入れていたのだが、重くて大変な作業であった。しかし最近は、刈り取った籾はコンバインのタンクに入り、一杯になったら筒状のアームを伸ばして軽トラックの袋に自動で排出する装置が付いた機械が多くなってきた。農家は米になるまで稲に触ることなく収穫できるようになってきたのである。

 そんな強い味方であるコンバインにも弱点がある。通常、盆の頃までは米を太らせるように田んぼに水を入れ、その後水を止めて地を乾かすのだが、今年のように盆過ぎから雨が多く晴れ間が少ないと土が乾かずぬかるんでしまい、コンバインが入れないのだ。そんな状態なので今年はコンバインが走行できるだけでも幸いで、広い田んぼを全て手刈りをしなければならないところもあり、人海戦術を強いられ家族総出で刈り取りをする姿も見られた。
 農業は天候により作業の方法や収穫量が大きく左右され、毎年同じことをしていても同じようには採れない。ベテランの域に達していても難しく、田舎の暮らしは決してスローライフではない。しかし、収穫時期の「米のなる木がお辞儀する」姿は、農家にとって最高の賞賛なのだ。

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