《コラム》23 「そば会」

投稿日:2016.01.15

 年末には「三世代交流そば会」という行事が奈佐地区公民館主催で開催される。この日は奈佐小学校の体育館に全児童と親、おじいさんおばあさんが集い、地元特産のそばを打って、その味を楽しむ催しである。

 この催しの歴史は長く、昭和49年に奈佐地区で農家高齢者パイロット事業、高齢者教室が開設され、その年の秋「今、その技術と味の伝達を行わないとだめだ」という声が関係者の中で高まり、忠臣蔵ゆかりの大石りく女誕生の地でもあるところから12月14日を「そば会の日」と定め、技術と味の伝達講習日とし、今回で43回目を迎えた。現在は12月の第1日曜日に行われている。

 奈佐地区は、地形的に耕地に恵まれず、山あいの奥地まで作物を栽培するため、山焼きのあとにまでその地を求め、多くの農家は荒地でも短期間で生長するそばを栽培していた。また、そばのつなぎとして最も適した自然薯がこの地に多く自生していたこともそば打ちが盛んに行われていた理由かもしれない。

 現在では、日常的にそばを打って食卓に出す家庭は少なくなってきたが、それでも家での行事の際にはそばを打つ家庭がまだある。

 
 体育館の床にシートを敷き、おじいさんやお父さんに教わりながら麺板にのせた生地を麺棒で伸ばしていくのだが、中にはとても上手に伸ばして手際よく包丁で切っていく児童がいる。そんな子はきっと家でおじいさんのそば打ちを見ながら手伝っているに違いない。三世代が同居しているからこそ学べる生きる力なのかもしれない。打ったそばを体育館の外で湯がいてみんなで本物の味を食すのである。子供たちはお礼に、伝統芸能の奈佐節を披露し、食と芸能の伝統文化を守り伝える意義深いそば会の一日が終わる。

そば会IMG_5473
 今の時代、安く・早く・新しいものが求められる風潮であるが、6年間、奈佐小学校で「そば会」に携わった子供たちは、この地を離れることがあっても、幼い頃に経験した故郷の味を忘れることはないであろう。

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