《コラム》25 「薪ストーブ」
雪の降る夜は楽しいペチカ ペチカ燃えろよお話ししましょ♪ 北原白秋 作詞、山田耕筰 作曲の童謡で、ペチカとは北欧生まれの暖炉の事である。寒く長い冬を過ごすために身近な燃料で家の中を暖かく過ごすための暖房器具であるが、日本の家には馴染みのない装置である。日本の伝統的な暖房器具は「囲炉裏」「コタツ」が一般的であろう。これらは局所暖房の器具であるため部屋全体を暖めることはできない。石油ストーブを使っているとその部屋は暖かいが一歩部屋を出るととても寒い。家の中でも極端に温度差があるのが日本の民家である。最近はバリアフリーと言われて段差のない家がつくられるようになったが、温度のバリアフリーはまだまだ現実化していない。世界的に見てもこのような暮らしをしている国は多くない。先進国で冬に家の中が寒いのは日本くらいである。
ところが最近になって、薪ストーブを据えられる家庭が増えてきた。エコな暮らしを考えている人が増えてきたのかもしれないが、これがなかなか暖房設備としては優れものなのである。家の形にもよるが、薪ストーブを焚いていると室内の空気が乾燥して結露はなくなる。また、炎から遠赤外線が飛んで部屋全体がまんべんなく温もる。ストーブの上に鍋を置くことが出来るものもあり、鍋を置いておくと固い食材でもとても柔らかく煮ることが出来る。特に肉・ロールキャベツなどはとろけるくらいの食感になる。
薪ストーブの醍醐味は何と言っても燃える炎を楽しむことであろう。オーロラのような炎を眺めていると何時までも飽きない。窓の外は雪、中は燃える火を見ながら冷えたビールを飲む。至福の時間である。
但し、薪ストーブは手間がかかる。薪の準備に始まり、着火もタイマーセットのようにはいかない。何度も薪をくべないといけない。灰の始末・煙突掃除と全てがアナログの道具である。しかし、このひと手間掛ける暮らしが楽しいと思う家族にとっては冬の訪れが楽しいと思えることがあるのかもしれない。