《コラム》28 「災害と防災」
今年も台風の季節がやってきた。毎年この時期になると天気予報のニュースを真剣に見るようになる。工務店を営んでいると台風接近はとても気掛かりである。特に足場を組んだ状態の現場があると、風が強い時には倒壊の恐れもあるのでその対策に追われることになる。
今年の台風の特徴は雨が多いように感じる。数十年に一度というような表現の降雨とは一体どのような降り方なのだろう。そんなニュースの後には必ずと言って良いほど崖崩れの報がある。日本は世界でも類のない災害発生が多い国である。その理由は、日本の地形は高地が多い上に、河口までの距離が極端に短かく、川の流れが速いため、土や石をも流してしまうからだ。また、日本の年間降水量は世界平均の1.8倍であり、しかも梅雨と台風期に集中している。又、火山や断層が多く、その周辺の地質はもろく雨や地震によって崩れやすいのだ。
この豊岡でも過去何度も大きな災害に見舞われた。この災害を出来るだけ未然に防ぐ為に、砂防という技術に生涯を捧げた偉人が豊岡におられる。砂防の父と称された赤木正雄博士である。
赤木氏は、明治20年3月24日、豊岡市引野に生まれ、東京帝国大学農学部林学科で学んだ。明治43年9月、我が国が大水害をうけた時、学校長の新渡戸稲造が始業式で「治水事業は華々しい仕事ではないが、諸君の内一人でも治水に身を捧げる者はいないか」と話した。これを聞いた赤木氏は「よし、治水事業に自分の身を投げ出そう。そして、その上の砂防を研究しよう」と決心した。卒業後は内務省に入り全国の大きな河川の砂防工事を指導して実績を積み、日本に「赤木砂防」を普及させ、治水機構の根本的改正を実現。「SABO」は世界共通語となった。弊社は4年前に縁あって、赤木正雄展示館の創設に伴う建築工事を施工させていただいた。
私の仕事である建築の法律の基本である建築基準法の第一条には、「国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする」と謳っている。土木と建築で専門分野は違えど、国民の生命と財産を守るという大儀をあらためて認識をした次第である。