池田先生訪問
昨年11月に熊本で行われた「地球の会」サミットに参加した際、
基調講演をされた池田先生のお話を聞いて、もう一度池田先生にお会いしたいと思い
長崎のご自宅を訪問しました。
先生は、大村湾に面した岬の先端に茅葺き屋根の家を建てて暮らしていらっしゃいます。
石積みの護岸の上にデッキが組んであり、そこから眺める大村湾の風景が素晴らしく、
まさに自然の中に溶け込んだ佇まいです。人の暮らしの原点を感じます。
ちなみに奥様は、生まれも育ちも東京渋谷区。そんな奥様ですが、ここに住むことには
全く抵抗はなかったそうです。流石、人生の価値観を極めると
「文明の中に浸かって暮らす事が豊かではない」事に気付かされるのだと感じました。
◆ご自宅◆
お住まいに据えられた囲炉裏を囲んでお話を聞かせていただきました。
池田先生は、日本初の超高層建築「霞が関ビル」の設計をされ、京王プラザホテル・
新宿三井ビルなど、日本の超高層ビルの先駆けを築いてこられました。
現在85歳。
新宿三井ビルの50階にオフィスを構えて仕事をする中で、人工環境の持つ根本的な問題に気付き、
現在は日本の生態に根ざした建築・環境づくりに取り組んでおられます。
先生の「欲望が文明を発達させ、文化は足るを知る。近代化すると感性が失われていく。
文明という名の下に様々な自然、文化が破壊されてきた。」とのお言葉は
大変衝撃的で心打たれるものがありました。
そして「文化」と「文明」の違いについて対比をされました。
文化 ― 固有・対等・伝承・知足・自然
文明 ― 普遍・優劣・創造・欲望・人間
日本の建築文明の最先端を歩んでこられた方ですが、
自然の中に身を置く事が健全な体をつくることに気付かれ、
正に今、日本の民家の原点で暮らしておられます。
「『木の家づくり』 は、『文明』の名の下にしているのではない。『文化』なのだ。」
と話された言葉に、我が社が目指している家づくりの方向と共通するものがあるように感じました。
人が暮らしを営む大切な住まいの造り手としての使命を感じ、身の引き締まる思いをしました。
今後も暮らしの豊かさを感じられる家づくりを心掛けていきます。 池口善啓