STORY

Vol.03 ほたる舞う里山の暮らし

【改築】大好きなわが家の「思い出」を受け継ぎながら、 今の暮らしにあった「家」を実現された二世帯・三世代ご家族の物語

「自然の四季を大切にした農家の古き良き習慣を受け継ぎながら、個々の生活を大切にすること」

これが、改築に際してのH様からのご要望の柱でした。H様宅は、おじい様が建てられた築74年の古民家。ご主人を含め、お父様、お母様、(ご主人の)弟さんや妹さん、親戚の叔父さん叔母さんなど、この家で育った(暮らした)たくさんの人達の「大切な思い出」が残ったお家です。そんな大切な思い出をしっかりと受け継ぎながら、ご家族一人ひとりの「今の暮らし」にあった家にすることが、H様ご家族の願いでした。

子ども達も「この家が、とにかく大好き。新築反対!」。

そもそも、改築を考えたきっかけは「雨漏り」。なので、「雨漏りする屋根を直そう」と、修理・修繕といったイメージで考え始めたのが最初だったと。しかし、あれもこれもと要望が膨らみ、結局“大きな計画”になったそうです。それでご主人は、「いっそのこと建て替えたほうがいいのでは?」との思いから、ご家族に相談。すると、お父様やお母様、それに今は都会で暮らす(ご主人の)弟さんや妹さんからも、「思い出のたくさんあるわが家を、なるべく残して欲しい!」と改築を希望する意見が。加えて、(この家に住んであまり年月の経っていない)子ども達からも「この家が、とにかく大好き。だから、新築反対!」との声が。それで、建て替えではなく、「改築」を選択されたのだそうです。

しかし、「寒い」、「暗い」という切実な悩みが!

家族みんなが大好きなわが家だったのですが、とにかく「寒い」、「暗い」のが問題でした。
家の南側がすべて壁になっているので、陽の光りが入らない。そのため、「寒くて、暗い家」になってしまう。

「寒い」、「暗い」を解決するために、南側に向かって開かれた家にすること。そして、南側に寛げる部屋を造ること。これが、改築の重要な指針になりました。

また、お風呂が(居間から)遠くにあって、お風呂に行くのがとても寒かったこと。特に冬には、お風呂に行くのに“勇気がいる”ほどだったと。なので、寒さを気にせず、寛いで入れるお風呂にして欲しかったと。

改築にあたって、ご家族それぞれの「こんな家にして欲しい」という希望が、まとめられました。

お父様からは、「農業」、「思い出」、「断熱」、「トイレ」といったご要望が出ました。

お父様のお仕事は、農業。なので、コンバインやトラクター、鍬や鎌などたくさんの農機具が必要になります。そして、それらの農機具を整理整頓して収納する場所が必要です。これまでは南側にある納屋が“まとめて仕舞う場所”だったのですが、その納屋へは“わざわざ”玄関から回らないと行けないとても不便な動線。しかも、道路まで出るのに、狭い通路を通る必要もある。毎日のことなので、これがとても大変だったと。これを改善して、お父様・お母様の部屋から直接、納屋に行けるようにして欲しいというのが、お父様のご要望。

また、「わが家の思い出は、なるべく残して欲しい」とも。例えば、「柱」。お父様が小さい頃、いたずらをして(おじい様に)怒られた時、よく縛り付けられた「柱」があるそうです。「その柱は、そのまま残して欲しい」と。(はい、わかりました。ちゃんと残します)

同時に、せっかく改築をするので、「暮らしやすい家にもして欲しい」と。「断熱をしっかりして、暖かい家にして欲しい」。また、「トイレや洗面所も、使いやすくて、清潔な感じにして欲しい」と。

お母様からは、「花や果物、野菜を育てる場所が欲しい」と。そして、「庭の花や果実、野菜を見る場所、見てもらう場所もあるといい」とも。友達や親戚、ご近所さんが来て、庭の花や果物、野菜などを見ながら、見てもらいながらおしゃべりをするのがとても楽しいからと。

 

また、「外に広い調理場が欲しい」とも。薪や七輪を使って、外でお料理をすることが日常だそうです。例えば、春には山で採ってきたタケノコを煮たり、年末にはお餅をついたりと。そんな日常使いの調理場が“外にある”のが、お母様の「いつもの暮らし」でした。

また、お母様も「南側を活かしたい」とのご希望。南側に窓を付けて、陽の光りが入るように。出入口も設けて、お布団が直ぐに干せるようにと。

看護師をされている奥様からは、「勤務が交代制のため、寝る時間が不規則。昼間でも周囲の音が聞こえにくい家にして欲しい」とのご要望。また、「夜中に帰って来てお風呂に入るのがとても寒い。夜中でも快適に入れるお風呂にして欲しい」とも。加えて、「部屋干ししても、洗濯物が乾きやすい場所が欲しい」と。

ご主人からは、「裏山から吹き下ろす風がとても爽やかなので、この風が家の中を通り抜ける間取りにして欲しい」と。また、「キッチンとダイニング、それにリビングはひとつになった感じがいい」とも。その上で、「リビングと裏庭に一体感があるといい。気軽に出たり入ったりできるイメージで」と。そして、「吹き抜けがいい」と。

ご主人のご要望に沿って、ワンルームのLDKにしました。奥にあるテレビがリビングからも見えるように、ダイニング・テーブルは(背の高いテーブルではなく)掘りごたつにしました。リビング部分には薪ストーブを置いています。そして、その上を吹き抜けにして。リビングから旧宅の梁や柱が見えるので、LDKがとても落ち着く空間になりました。
特に、こだわったところは「南側の利活用」。 南側を大きく開放した家になりました。
南側の半分はリビング。もう半分が、ご両親のお部屋。

リビング側には大きな掃き出し窓とその先に少し広めのウッドデッキを設け、南側の庭とつながるようにしています。

リビングの隣に位置するご両親のお部屋には、お部屋専用の出入口を設け、土間と大きなサッシの引き戸で南側の庭とつなげています。

ここから出入りして頂くことで、農機具置き場や畑にも直ぐに行って頂けます。晴れた日には、お布団も直ぐに干して頂けます。お母様の家事の負担がだいぶ楽になりました。

「南側の開放」は、家族みんなの暮らしを快適に、そして楽にする大きなカギでした。

今の暮らしはどんな感じですか? やっぱり暮らしやすくなった!

南側を開放したので、「家の中が明るくなった」と。断熱対策もしっかりされているので、「冬も暖かい」。それに、裏山から吹く風がLDKを通り抜けていくので、「夏もすごく快適だ」とも。

お客様をお招きするのが、心地よくなった。

H様宅は、以前からご近所さんやご親戚、(ご主人の)弟さんや妹さんがよく来られるお宅だったそうですが、改築後はその頻度が更に多くなったそうです。そして、過ごされる時間も長くなったのだとか。

田んぼのお手伝いやタケノコ・山菜採り、夏には避暑を兼ねてなど、とにかくご親戚の方がよくお見えになるH様宅。LDKやトイレなどが快適になったので、「招く方も、訪れる方も、心地よくなったようだ」と、ご主人から。

また、ご近所さんも、今までは「縁側で話す」といった感じでしたが、今ではリビング・ダイニングまで上がって頂き、そこで「半日、話し込んでいる」といった風になったそうです。

どこが一番好きですか? 自慢の井戸。

ご主人に、「ここが一番好き!ってところはありますか?」と聞いてみました。すると、「一番好きというか・・・。実は、裏の井戸がちょっと自慢なんですよ」と。

「裏の井戸」とは、おじい様が昔、掘られたという井戸で、お水がとっても美味しいそうです。そのため、H様宅では昔から、飲料水やお料理の時のお水としてずっと使ってこられたそうです。言わば、H様ご一家の暮らしと共にある「歴史」のような存在です。家を改築した時に、井戸を(守るために)覆う石を置いたそうです。家の北西の角に、いい雰囲気に佇んでいました。

インタビューを終えて

「とても仲のいいご家族だなぁ~」と感じるH様ご家族でした。

例えば、二世帯・三世代がすごく自然に暮らしておられるようで、とても羨ましい雰囲気がありました。インタビューの初めの方で、「二世帯住宅なので、ご両親との距離感など、間取りの工夫はどのようにされたのですか?」と伺うと、「それは、まったくしていない!」と。「うちは共働きで、子ども達もまだ小さかったので、(子ども達の面倒を見るのに)両親の手を借りないといけない。だから、自然に二世帯が“一緒に住んでいるって感じ”になっている」と。

インタビューの時には、都会で暮らす弟さんも帰省しておられましたが、「ほぼ毎週、帰ってくる」とのこと。「実家が大好き」だそうです。大阪で暮らす妹さんも、頻繁に帰省されるそうです。ご家族がとても仲が良く、そして(いい意味で)気兼ねなく暮らしておられる感じが、とても印象的でした。改築の際のご要望が、「個々の生活を大切にすること」という内容でしたが、家族一人ひとりのことを大切に想う気持ちが、仲の良いH様ご家族の土台なのかなぁ~と感じる取材でした。

それから、もうひとつ。

新旧のバランスが最高でした!